めも帖

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7月19日の水曜どうでしょう

適切なものを選ぶいい話。

2006年7月19日水曜日

えぇ、北海道民のみなさま。嬉野でございます。

さて、いよいよ今夜でございます。
今夜の「クラシック」より「原付・東日本縦断ラリー」が始まるのでございます。

まぁ、そんなにね、仰々しくお知らせすることでもないのですが、面白いので見ていただきたいぞ、と、思いましたので、念入りに宣伝をしております。

もうね、この企画を御覧になっておられぬ方でも、『激突!大泉洋さん!だるま屋ウイリー事件』と聞けば、「おぉ、あれか!話には聞いておりましたぞ」と膝を乗り出してしまうというほどの名場面が中盤に待ち受けておる企画なのでございます。

この企画は、「水曜どうでしょう」のラスト・ランとなりました「原付・ベトナム縦断」の原型となるものでありますて、
ある企画会議の日、ミスターが、会議の席でこんなことをぶち上げましたのが全ての始まりでございますた。

「知ってます?ホンダのカブって1リッターで100キロメートル走るんですよ」
「そんなに走るんですか」
「100キロったら凄いですよね」
「100キロったら凄いです」
「どうですか、カブに1リッターのガソリンを入れて、札幌からどこまで走れるか、やってみませんか」

札幌−小樽間というのは、50キロほどございます。
抜群の燃費を誇るホンダ・スーパーカブという50ccバイクは、たった1リッターの燃料で、小樽まで行って、ゆうに札幌までまた帰ってくることができることになるのです。
そんなことが、本当に可能なのか。
ならば、ターンなどせずに走れるところまで走ったとしたらば、いったいカブは札幌からどこまで走ってしまうのだろう。
そんな「トリビアの種」のような好奇心が、ミスターの頭の中で、ふつふつと湧き上がったのでございましょう。
ところがオカシナことに、企画会議が終わります頃には、どうしたわけか、

「じゃぁ、東京でカブを買って、乗って帰ってみたら、実際、札幌まで帰ってこれるものだろうか」という、猪突猛進の荒行のような企画に変貌しておったわけなのでございます。

しかしながらミスターはライダー。「派手で好い」と、やる気満々でございました。
一方、もうひとりのモジャ毛の若手は、バイク未経験者でございました。

東京―札幌間は、1100キロもあるそうでございます。
そんな冗談では言えないような距離を、買ったから「さぁ乗ってください」、「さぁ帰りましょう」と、言って「はい、分かりました」と、あいつが乗って帰れるものだろうかと、一瞬三人は目を合わせましたが、それ以上真剣に考えるものは誰一人としておりませんでした。
それよりも、「タレント二人が、ずっとバックショットという画はどうだろうか」、という問題の方が深刻でございました。

おまけに音声に関しては、放送開始以来、常にカメラマイク一本で全てのロケを乗り切ってきたどうでしょう班としては、
「じゃぁ、走ってる間のトークはどうするんだ」という技術的な問題もあったのでございます。

その辺りのことを考えながら、後日、頭の中で企画をシュミレーションしながら藤村くんが言うわけであります。

「これは、あれかなぁ」
「ふむふむ」
「カブで走る二人をオレらが後からカメラ・カーで追いかけるということだよね」
「そうなるね」
「ということはあれかい?トークして欲しい時は、適当に止まってもらって、脇にバイク停めて、そこでいちいちトークしてもらわないとマイクで声が拾えないということかい?」
「そういうことになるねぇ」
「つまりこういうことだよね、ババババッってエンジン音だけが響く二人のバックショットの画が、ある程度続いたら、オレが、『ちょっとこの辺りでお二人に感想を聞いてみましょう』、なーんつって言った後、【感想を聞いてみる】みたいなのが一枚入って、あの二人がトーク始める、みたいなかい?」
「そうだろうねぇ」
「たる過ぎないかい?」
「たる過ぎるよねぇ」
「それって、ある程度間抜けだよね」
「間抜けだねぇ」
「間抜けだよねぇ」
「でも、【バババッ】→【お二人どうですか】→【なにが?】みたいなトークの繰り返しで札幌までやりきるったら、これはある意味凄いことだよ」
「そうねぇ」

結局、テレビ局としては当たり前のことですが、ワイヤレスマイクを二人に付けて声を飛ばしてカメラ・カーで受信、ミキサーを通してその二人の声をカメラへ入力と私は考えました。

ところが、そこまで考えた時に、そういえば、うちにはもう一人、声の出演者がいたなと隣のヒゲに目をやったのでございます。

「じゃあ、このヒゲの声をオレはどうやって拾えばいいんだ」

そう私は思案したわけでございます。

それに、だいたいこのヒゲの声をどうやってタレント二人に聞かしてやれば良いんだろう?
ワイヤレス・マイクは当然一方通行で飛んでくるだけなのです。
おまけに、もし何らかの理由でカメラが車外に緊急的に出動しなければならない時に、カメラに何本もケーブルを差していたら、その度にそのひもを一個一個はずして機動力がモーレツに落ちる。
だいたい一個一個はずすオレが面倒くさい。

問題は山積みでございました。

しかし、そこが技術素人の身の軽さ。
私は、車内に1個のスピーカーを置くことにしました。

つまりワイヤレスマイクから飛んできた二人の声を、ミキサー経由で、このスピーカーにつないだのございます。

そうすると、二人の声はスピーカーから聞こえる→スピーカーから聞こえるからカメラマイクで拾える→だからおヒゲの声も一緒にカメラマイクで拾える→車内のみんなも一緒にタレントのトークを聞ける→だからみんなの笑い声だってカメラマイクで拾える→ということは、またしてもカメラマイク一本でやれる→ステキ。

この「きれいな音を録ることよりは、実践で絶対まごつかず、かつ、どうでしょう的に実りの多いトークに全比重を取り、音質は必要最低限のものを確保するという」野蛮な録音システムのお陰で、どうでしょう班は、またしてもカメラマイク一本でロケを乗り切るのでございます。

そして、この音質的に野蛮なシステムのお陰で、カメラには1本のケーブルも差す必要がありませんから、カメラはフリー。機動力抜群となり、私はストレスがなくなる。

あとはトランシーバーを3個買ってまいりまして、タレントそれぞれに持たせて耳とし、その耳に向かって3個目のトランシーバを握りしめた藤村くんが、車内でガハハと笑うばかりという、いたって単純な段取りでございました。

実に現実的かつ乱暴な割り切りの良さでもって、とうとうストレス皆無な「原付ロケ・録音システム」が出来上がり、やはり「どうでしょう班」はカメラマイク一本でロケを乗り切るに限ると、私は思いを新たにしたのでありました。

しかし、大きな問題がまだありました。

現場の東京で、何も知らない大泉洋さん本人に、どのような誘導をして話を持ちかけるか、です。

いきなり、東京から札幌までバイクで帰るぞと宣言したところで、あのゴネル大泉洋氏が「分かりました」と素直に同意するはずがない。

では、どのような誘導をしたらば、彼自らが意志して、この企みに同意したように持っていけるのか。

その誘導尋問の想定が、藤村くんの課題として残ったのでございます。

さぁ、今夜は、その企画発表の日!

いかなる顛末になりますやら、お楽しみに!

いやぁなつかしい。

さぁ、ということでね、北海道民のみなさま。
そして、順次「クラシック」を御覧頂いております全国のみなさま。
そういうウラ話もご記憶になられまして、楽しく御覧いただければこれ幸いと思うのでございます。

ではみなさん、また明日。お会いしましょうね。

長ぇな、また。