ユーザビリティエンジニアリング―ユーザ調査とユーザビリティ評価実践テクニック
読むきっかけ
「ユーザー中心デザインの導入vs納期 -仁義なき戦い- | webディレクターの阿呆な研究」を読んで、ユーザービリティの「現実的な落とし所」に興味がでました。
ユーザービリティといえば、UI/UXルームを用意して…とか、インタビューをして…とか、そんなこと、なかなかできないよなあ、と思うなかで、ユーザービリティは、どのように実現するんだろう?と思っていました。
しかも、ユーザービリティって、民主主義的に決め始めると、結局、なんか決まらない…ということに。最悪、なんか使えそうで使えないとなります。微妙に使えるのが、また、モヤモヤさせるところであります。
それだけに、「現実的な落とし所」について気になるのでした。
読んでみて
読んでいる途中にメモを色々と書いていました。かなりメモしていたので、それを整理してみました。
ユーザービリティの評価方法には、色々とあることがわかります。また、実施方法や、そこにかかる費用なども、ある程度見えてくるのではないでしょうか。費用とスケジュールなども考えると、実際に行うとなると、かなり難しいことなのだと思います。
そこで、「ヒューリスティック評価法」が、「現実的な落とし所」になるのだと思います。この方法であれば、デザイン担当、システム担当、ディレクター担当?などで検討して落とし所を出すことが出来ると思います。結局、なんだか決まらない、というのもヒューリスティック評価法の基準を持って考えることになるので、話の軸が保たれる(もしくは、保たれやすい)のだと思います。
ウェブサービスの開発であれば、作ったらリリースなのではなくて、試験期間をとり、そこで、ヒューリスティック評価法を使うのは、現実的なのかも?と思いました(それさえ厳しい時も多いけれどさ)。
ユーザビリティの定義
- 特定のコンテキストにおいて、特定のユーザによって、ある製品が、特定の目標を達成するために用いられる際の、効果・効率・ユーザの満足度の度合い
- ISO9241 この時に、「ユーザービリティ」の定義
グループインタビューの限界
- 参加者の意見に影響される
- 参加者がいることで、ウソにならない脚色がはいる
- ユーザビリティでは、人間の行動を扱う。感情や、本音を扱うわけじゃない
- 悪いインターフェイスのユーザの本音は、なんとなく腹立たしい
- 事前に質問を用意してインタビューしてしまうと、アンケートと変わらない。仮説がある状態
コンテキスト調査法
- 「師匠と弟子」の関係を築く
- 教えを請う、根掘り葉掘り、確認する
- 専門家にならない
- 途中で仮説検証しない
- 粘らない
- 体験を知る
インタビューのドキュメント化
- 情報を要約しては意味がない
- 断片的な体験の把握になってしまう
- ユーザの意見を要約するのは可能
- 師弟関係を築いてしりたかったのは、体験
- ユーザの自白ではなく、状況証拠から結論を導く
ユーザの本物のタスクは何か
- ユーザの真のニーズ
- 明示的なニーズだけじゃない
- 当たり前のことは、ユーザは言わない
- 気付いていないニーズがある
- 大発見となるニーズだけじゃない。当たり前と感じられるニーズも大切。全体を適切に扱う
ニーズと解決策を混同しない。何を解決すべきか?どのように解決するかは、また別な話
プロトタイプ。試作ではなく、試用品
オズの魔法使い
-
- 試用するために作る=システム開発とは限らない
- 影から人が動かしてもよい
評価
- 総括的評価と、形成的評価の二種
- ユーザビリティで使うのは、形成的評価
- インタフェースの設計をこれからするのか?途中なのか?終っているのか?
- 総括的評価しかしないなら、全くの無駄
分析的手法または専門家的評価と、実験的手法の二つに区分される
ヒューリスティック評価法
- システム状態の視認性
- システムと実世界の調和
- ユーザコントロールと自由度
- 出口ややり直し
- 一貫性と標準化
- エラーの防止
- 記憶しなくても、みれば分かるように
- 柔軟性と効率性
- ショートカットとか
- 美的で最小限のデザイン
- ユーザによるエラー認識、診断、回復をサポートする
- ヘルプとマニュアル
ヒューリスティック評価の方法
- 複数人。三から五
- エンジニアや、デザイナー
- 当事者以外
ヒューリスティック評価の方法:計画を立てる
- 部分的に行う
ヒューリスティック評価の方法:実施
- 評価者同志は、相談しない
- 複数の視点が大切
- 時間をかけない
ヒューリスティック評価の方法:ミーティングの結果をまとめる
- ブレインストーミングで解決策なども提示するのもあり
代表的なテスト手法
代表的なテスト手法:思考発話法
- 考えていることを話しながら操作してもらう
- 強力な評価手法。失敗成功の事実だけではなく、なぜ?がわかる
代表的なテスト手法:回顧法
- 操作完了後に話しながら操作
- インタビュアーの経験が浅くても大丈夫
- 操作が完了しなかった時に、理由がわからない、という欠点
- テスト時間がかかる。回顧するため
思考発話法、回顧法は、形成的評価
代表的なテスト手法:パフォーマンス測定
- タスク達成率 → 効果
- タスク達成時間 → 効率
- 主観的評価 → 満足度
- テスト会場などを用意して行う
- ターゲットユーザ毎に20人以上で意味がでる。
- 複数のインタフェースをテストする。基準がないから。
- マーケティング担当は、数値があり喜ぶ
- 設計担当は、原因がわからないので、手の打ち用がない
- パフォーマンス測定は、総括評価。プロジェクトの前後で行う
- 評価紙には、日本向けもある
- ウェブユーザビリティ評価スケール
- 内容の変更はしないこと
- 総括評価として優れているが、形成的評価の代わりではない
ユーザビリティの倫理学
ユーザビリティを実証するのは困難
- 何人のユーザでテストしたら?何種類のタスクを検証したら?ユーザテストは、反証を目的にしている
- ユーザブルであるという仮説に対して、ユーザテストをすることで、問題がでたら、具体的な反証となる
- ユーザテストをする前に、ユーザブルである仮説を立てるためには、プロトタイプや、ヒューリスティック評価が必要
ユーザテストの被験者数
- 5人で85%の問題発見。あくまでも平均。また、問題の質は考慮しない
- 15人で一回よりも、三回に分けてテスト
- 5人で3回行ったほうが、問題が減っていく
おすすめ
ユーザービリティを気にする人向け。
ウェブサービス開発で手を動かす人なら、読むといいかも。
ユーザビリティエンジニアリング―ユーザ調査とユーザビリティ評価実践テクニック
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